会長挨拶

第41回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
会長 宇原 久(札幌医科大学医学部皮膚科学講座 教授)

Disce, doce, dilige! (学び、教え、愛せ)

 第41回日本皮膚悪性腫瘍学会の会長を務めます。札幌医大主幹による開催は、第8回(1992年)の高橋 誠教授、第19回(2003年)の神保孝一教授、に次いで3回目となります。1985年の日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会第1回(東京大学、川村太郎教授)の開催から40年が経過しました。私事で恐縮ですが、私は1986年に大学を卒業し、信州大学の斎田俊明助教授(当時)の命で1988-1990年に国立がんセンター病理部と皮膚科で研修し、その後も皮膚腫瘍の分野で診療を続けてきました。私は本年度で定年を迎えますので日本皮膚悪性腫瘍学会の40年間はほぼ私のキャリアと重なります。振り返ればたくさんの思い出がよみがえってきます。
 40年間の時の流れの中で、多くの先輩医師によって皮膚腫瘍の診断と治療の進化がありました。一方で、進行した患者さんを救えない失望感に満ちた時代が長く続きました。ご存じのようにこの10年間で登場してきた免疫チェックポイント阻害薬や小分子分子標的薬によって治療効果は格段に向上しましたが、その効果はまだ十分とはいえません。
 本学術集会のテーマは“Disce, doce, dilige! -学び、教え、愛せ-”としました。皮膚病理医Ackerman先生の書籍“A Philosophy of Practice of Surgical Pathology: Dermatopathology As Model”の最後のページに記載されている文句です。いろいろ意味合いがあると思いますが、私は勝手に、本学会が“若いもんも、ベテランも、愛を持って皆で勉強して教えあう”場になって欲しいと願って使いました。さらなる進化を次の世代の方に託したいという思いもあります。

 6月末は北海道が夏を迎える素晴らしい時期です。多くの方にご参加いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。以下のような企画を予定しています。

開催概要(案)
  1. 1)日本皮膚悪性腫瘍学会はヨーロッパ最大の皮膚がんに関する学術会議(EADO)と2023年に提携を結びました。その記念としてEADO代表としてチューリッヒ大学のDummer教授(分子標的薬の開発者)に講演いただきます。
  2. 2)Yun教授(Chonnam大学、韓国:WHOの皮膚腫瘍分類第4版および5版(改定中)の著者)をお呼びしてメラノーマの遺伝子異常について講演いただきます。
  3. 3)Ackerman先生が伝えたかったこと(対談:斎田俊明先生、赤須玲子先生、宇原)
  4. 4)箕輪智幸先生(米国MDアンダーソンがんセンター)に腫瘍免疫学の最先端を講演いただきます。(座長:鳥越俊彦 札幌医科大学第一病理教授)
  5. 5)固形がんと悪性リンパ腫について病理検討セッション (固形がん、鶴田大輔大阪公立大教授、Lee教授、Kyungpook大、韓国、リンパ腫:菅谷誠国際医療福祉大教授、ほか)
  6. 6)皮膚悪性腫瘍ガイドライン第4版の解説(中村泰大埼玉医大国際教授)
  7. 7)皮膚がん取扱い規約第3版の解説(後藤啓介先生、ほか)
  8. 8)皮膚外科ビデオセッション(前田拓北大形成外講師、松下茂人鹿児島医療センター部長)
  9. 9)実践chatGPT(大塚篤司近畿大教授)
  10. 10)皮膚腫瘍診療の経済学(竹之内辰也新潟がんセンター副院長)
  11. 11)医師主導治験の今(船越健 慶応大准教授、緒方大先生、国がん中央)
  12. 12)皮膚腫瘍診療における緊急と対策(陣内駿一先生、国がん東、中野英司先生、国がん中央)
  13. 13)ダーモスコピークイズと解説(外川八英千葉大講師)
  14. 14)皮膚がん研修の実際(国がん中央、国がん東、静岡がん、埼玉国際、鹿児島医療セ、の研修医と卒業生)
  • 懇親会前に札幌医大皮膚科教室員、OB、有志による室内楽を披露いたします。